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ポジティブアプローチとは、商品やサービスの、ユーザーに取ってのベネフィットをまず紹介することで、その商品やサービスがある状態をユーザーにイメージしてもらい、ポジティブなイメージから商品やサービスへの興味関心や、購買したい欲求を引き出す、というアプローチ法です。
テレビのCMなどの多くは(時間的な制約もあり)、このポジティブアプローチで作られています。
モダンな街中や、荒野を颯爽と疾走する自動車。
真っ白に輝く歯。
スタイルの良いダンサーやモデルが着こなしている服。
これらは、それらの商品やサービスを利用したときのポジティブなイメージを訴えかけることを目的としたポジティブアプローチです。
ポジティブアプローチの注意点は、「押し売り」や「自慢話」になってしまうことでしょう。
商品やサービスを売り込みたいあまり、その利点ばかりを強調するセールスレターや、セールスマンはたくさんいます。ですが、利点ばかりを強調すると、逆に不信感を強めてしまうこともあります。
ですので、いかにポジティブなアプローチとはいえ、商品やサービスのポジティブ面だけを強調するのは考え物です。
ポジティブアプローチの本質とは、そこでみせられた「理想の状態」と、今の自分のギャップから問題意識か、または「理想の状態」に自分も近づきたい、という憧れや向上心のようなものを喚起することが目的です。
だとすれば、ポジティブアプローチで最初にアピールするポジティブさとは、商品やサービスのポジティブな側面というよりも、ユーザー自身が共感し、目指したくなるようなポジティブなイメージがよいでしょう。
そう、ポジティブアプローチで重要なのは、ユーザー自身が、自分のポジティブな未来をイメージすることです。
と、いうことは、ユーザーの現在の生活の中での悩みごとや困りごとが、あなたが扱う商品やサービスについてどう変化するのかを考えることが大切なのです。
このような進め方は、実はネガティブアプローチといわれる、最初にネガティブな情報で問題提起をする手法と同じです。
ですので、ポジティブアプローチも、ネガティブアプローチも、根本的には同じ、ユーザーの現状に対する理解と共感があった上で、そこから問題解決後のポジティブな側面にフォーカスするか、問題そのもののネガティブな側面にフォーカスするか、という違いといえるでしょう。
ポジティブアプローチを効果的に行うためには、ユーザーの心理がどのように変化するのかイメージし、どこに落としどころを持っていくかを考えながらアプローチしていくことが大切です。
基本的にポジティブアプローチは、理想的なイメージ、目指すべきイメージを提示することで、ユーザーにそうなりたいという欲求を持ってもらったり、そうなるためにはどうしよう、と考えてもらうことを目的としています。ですので、ユーザーがそのような心理に至るステップを知っておくことで、効果的なライティングができます。
ユーザー心理についての研究は古く、1920年代にアメリカのサミュエル・ローランド・ホールが提唱した「AIDMAの法則」をはじめ、様々な類型があります。
これらは、どれが正しく、どれが優れているということではなく、扱っている商材やユーザーとの接点の状況によって変わります。
理想は、それぞれの特徴をとらえた上で、自社や自サービスにとって最も良いモデル(法則)をオリジナルで作り出すことでしょう。
顧客心理モデルには様々なパターンがありますが、代表的なものを分類すると3つに分かれます。
第一の分類は、「AIDMA」「AIDA」モデルなどが属する、「D=Desire(欲求)」の喚起をその後のコンバージョンへのテコにするモデルです。
第二の分類は、「AISAS」モデルに代表される、「A=Action(購買などの行動)」の後に、「S=Share(共有)」というさらなる行動を含めたモデルです。これは、SNSなどが発展した現代ならではのモデルといえるでしょう。
第三の分類は「AIDCA」モデルです。これは、「AIDMA」モデルと似ていますが、「M=Memory(記憶)」が、「C=Conviction(確信)」に代わっています。対面営業などのダイレクトマーケティングの手法における考え方で、ダイレクトにアプローチする分、ユーザーの心理を「確信」にまで導き、より確実にActionにつなげることを意図したものです。
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
AIDMAモデルは、最も古く、最も一般的な購買心理モデルです。
A:Attention(注意)
I:Interest(興味)
D:Desire(欲求)
M:Memory(記憶)
A:Action(行動)
の順になっており、これはチラシやDM、OOH(屋外看板広告)など、プロモーションとの接触と購買までに時間的、空間的な差異がある場合のモデルといえます。
これまで主流だった広告の考え方といえ、ポイントは購入したい、という「Desire」を、「Memory」によって保存することが大切、ということです。
ですので、チラシなどは複数回実施し、「Memory」を維持、喚起することが大切になるでしょうし、屋外に広告を掲示することで、何かの拍子に思い出してもらうことが大切になります。
一方「AIDA」は、「Memory」の要素が抜けており、これは現代のECサイトや、小売店での販売に向いているといえるでしょう。店頭ポップを作る場合や、ECサイトのEFO(Entory Form Optimization:購入のためのカートなど、エントリーフォームを最適化すること)を行う場合などは、このAIDAの法則を参考にすると良いでしょう。
また、タイムセールや残り在庫数の明示(ホテルの残室数がリアルタイムで更新されるなど)は、このAIDAの法則にのっとったものといえます。
AISASモデルは、広告代理店大手の電通が提唱しているユーザーの行動モデルです。
A:Attention
I:Interest
S:Search(検索、調査)
A:Action(行動)
S:Share(共有)
からなり、インターネット検索などで、気軽に多くの情報を検索できることと、SNSの普及によって広い意味でのRefferal(紹介)や口コミが次の顧客の獲得につながることをまとめたモデルといえるでしょう。
ECサイトなどで買い物をしたり、ホテルに泊まったりすると、後日メールが来て、「商品のレビューを書きませんか?」「お友達にご紹介いただける見込みはどのぐらいありますか?」などと聞かれるのが、このAISASモデルに沿った典型的なアプローチといえるでしょう。
また、近年の画像や動画投稿アプリのように、思わず共有したくなるようなインパクトのあるコンテンツを提供することもAISASモデルの活用といえるでしょうし、炎上商法といわれるものも、このAISASモデルに基づいているといえます。
ステルスマーケティングが忌避されるように、作られたプロモーション活動への信頼感が相対的に低くなっている現在、逆に口コミやRefferalの価値は高まっています。
AISASモデルは、今の社会の状況を反映したモデルといえるでしょう。
AIDCAモデルは、ある意味最強で、最もハードルが高いモデルといえるかもしれません。
AIDMAでは、「Meomory」つまり、覚えておいてもらえればよく、AIDAでは、「Desire」をどう生み出すか、ということが重要でした。AISASでは、まずは「Search」という行動を生み出すことがポイントだったのに対し、AIDCAでは、「Conviction(確信)」を生み出すことを目的とするモデルです。
「自分にはこの商品やサービスしかない」
「これが一番いい」
そのような確信に導くことは、他のモデル以上に慎重かつ計画されたステップ設計が必要となります。
ですが、だからこそWEBライティングの世界ではAIDCAモデルを参考にすると、ライターとしてのレベルアップにつながりやすいといえます。
それはなぜなのでしょう?
皆さんは、どんな時に「確信」を持ちますか?
まず、「なんとなくいいな、よさそうだな」という興味(軽い欲求)からスタートし、次にその商品やサービスについてもうちょっと調べてみます。この際に、価値観やその時の状況に応じて、他の似ている様々な商品やサービスと比較します。そのうえで、自分にとって大切だ、というポイントと、その商品やサービスが提供するSolutionのポイントがマッチし、さらに「今しかない」というタイミングが合ってはじめて、「決めた!」と確信に至るのではないでしょうか。
さらに、その基礎には、商品やサービスを提供している会社や、個人への信頼が必要になります。
古くは「天の時、地の利、人の和」といいましたが、ことほどさように様々な条件がマッチして初めて、「確信」を生み出すことができるのです。
AIDCAモデルがダイレクトマーケティングに向いている、といわれたのは、セールスパーソンが直接対面し、状況を理解し、信頼関係を構築しながら情報を提供するという、圧倒的な情報量の違いがあったためで、げんざいはそれがWEB接客にシフトしてきているといえるでしょう。
ポジティブアプローチのお話から少しずれてしまったように感じられるかもしれませんが、すでにお書きしたように、ポジティブアプローチの本質は「理想的、あるべき姿」の提示によって、ユーザーのAttentionとInterestを引き出し、そのうえで次のステップに進んでいく、というものでした。進む先が「Desire」なのか、「Search」なのか、「Conviction」なのかによって、表現すべき内容は当然変わってきますので、最初に今回はどのモデルを使ってライティングを進めるのか、その計画を立てておくことで、ポジティブの落としどころに導きやすくなるでしょう。
ポジティブアプローチで提示するポジティブの条件を、ここまで様々にご紹介してきました。
基本的には、Attention、Interestにつながるもので、そのためにもユーザーの悩みごとや困りごとに寄り添った、共感できる内容がよい、ということでしたね。
では、実際にどのような考え方で実務を進めればいいのか、具体例を挙げながらご紹介していきます。
安価でよく使う商品・サービスというのは、モノでいえば洗剤、歯磨き粉などの消耗品が代表的であり、サービスであれば、ファストフードでの食事などがこれに当たるでしょうか。
これらのポジティブアプローチを考える場合に重要なのが、安価でよく使うものほど、習慣化された購買行動に支えられる、ということです。
先ほど様々なモデルをご紹介しましたが、日常の消耗品や、いつものランチの場所などは、もはやAttentionもInterestもなく半ば自動的に選択されていることが多いといえます。そして、人間が基本的に変化を嫌う性質がある以上、今使っている商品やサービスに不満がなければそれを変える「リスク」を冒すことはないでしょう。
ですので、これらの商品やサービスをポジティブアプローチで紹介していく場合は、今だけ、ここだけ感や、過去との比較や、ユーザーが気が付いていないベネフィット(のなりたち)などをアピールします。
たとえば、「モニターキャンペーン、今だけ50%OFF」や、「〇〇史上最高」や、「牛丼の肉の厚さは、最もおいしく食べられる厚みの研究の末決まった」などが挙げられます。
さきほど、AttentionもInterestもなく購買意志が決定される、とお書きしましたが、だからこそAttentionを生み出すことが大切になります。そこで大切なのは、「そんなに安いの?」「そんなにいいの?」「そんなにこだわってるの?」というちょっとした驚きです。
ですので、このような商品やサービスをポジティブアプローチで扱う際には、ちょっとした驚きをどこでどう生むかを考えてみましょう。
最後に、高級ホテルやブランドのアクセサリーなど、ほとんどが付加価値で占められるような商品やサービスの場合は、実用性などよりもそのユーザーだからこそそのブランドを手にすることができ、そのブランドだからこそそのユーザーをより際立たせることができる、という個人のブランド戦略に基づいたメッセージを発すると良いでしょう。
これは、高価なものに限らず、例えば「このミネラルウォーターを購入することにより、原生林に1本の木が植樹されます」のようなものも同じで、つまりは「この商品やサービスを利用することが、あなたをユニークな存在にします」というメッセージを発します。
ですので、ポジティブアプローチでは特に、商品やサービスよりも、それを使っているユーザーのユニークさにフォーカスしたほうがよいでしょう。
ポジティブアプローチでは、「どんなポジティブ」で訴求するかが最も重要なポイントであり、ここが適切ならばこのアプローチはかなり成功に近づいているといってよいでしょう。
そして、どのようなポジティブが適切かは、ペルソナ設計に代表されるような、深く詳細なユーザー理解と、扱っている商品やサービスの内容によって変わることをご紹介してきました。
また、ポジティブの結果どのような変化をユーザーに生み出したいか、その設計図を書くためには、AIDCAモデルのような、様々なユーザーの心理モデルを参考にするべきでしょう。
最後に、最も大切なのは、あなた自身がどのようなポジティブアプローチで心を動かされるのか、そして、あなたの同僚や家族はどうなのかをできるだけ詳しく、頻繁に考え、聞くことです。
ペルソナも、心理モデルも、商品やサービスの性質も、すべて「概念」であり、まとまった一部分です。
実際にWEBライティングを行っていく中でそれを具体化するためには、部分と部分をつなげるディテールが大切になります。
そして、そのディテールを知るための最も身近で、最も学びの多い材料は、あなた自身です。
次に、ポジティブアプローチを使った広告に出会ったとき、自分自身の心がどう動くのか、そして、それはなぜかを考えてみてください。