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自社で行うにせよ、外注するにせよ、SEO対策にかかるコストは決して安価ではありません。
ですのでその効果測定は、より効果的な施策の導入といった次のステップに進むためにも、費用対効果を経営層などの意思決定者に説明するためにも必要になります。
ところが、この効果測定が適切でないために、SEO対策の効果の認識が不十分だったり、誤解が生まれてしまうこともあります。目的に応じ、適切に効果測定を行うことで、SEOを通じてよりよい成果をあげていきましょう!
SEO対策とは、簡単に言えば検索エンジンで狙ったキーワードが上位に表示されるようにする対策です。ですので、最もシンプルな効果測定は、狙ったキーワードでのキーワード順位の推移をみていくことがあります。
検索順位の推移をチェックするためには、「GRC」や「BULL」、「Google Search Console」などのツールを使用します。「BULL」は有料ツールですが、「GRC」や「Google Search Console」は無料で使うことができます。ただし、「Google Search Console」は、キーワード順位計測のための専用ツールではないので、この側面だけに特化した機能としては「BULL」や「GRC」に劣ります(しかし、それはツールの目的の違いであり、ツールそのものの優劣ではありません)。
これらのツールを使い、キーワード順位の推移をみていきます。
その際には、可能な限り自社のアクションプランとの相関を考えながら見るようにします。
オーガニック検索での流入の場合、因果関係や相関関係が不明瞭であることも多いですが、そうはいってもノーチェックでは施策の改善につながりません。
そして、このようなチェックを通じ、キーワード順位が上位のコンテンツはその作成ノウハウを生かして高品質コンテンツの量を増やしていきます。そして、キーワード順位が下位のコンテンツは、適切な内部対策を行うことで改善を図ります。
なお、こちらではキーワード順位の推移にフォーカスして解説していますが、そもそも、どんなキーワードを選ぶか、ということが大切であることは言うまでもありません。
SEO対策を行う上でこのキーワード選定は非常に重要なプロセスで、ここで自社の戦略が色濃く反映されます。
ただ、原則論としては、検索ボリュームは大きいものの、様々な目的で検索されてしまうためコンバージョンにつながりにくい「ビッグキーワード」を避け、より目的意識が明確なユーザーを呼び込めるような組み合わせ型キーワードである「ロングテールキーワード」を狙っていくことが、スタンダードな戦略となります。ただし、ロングテールキーワードを推定するためには、ユーザー像やニーズを深く考えることが必要になります。
SEO対策では、「オーガニック検索」つまり、ユーザーが自然に(オーガニックに)検索した上でのサイト流入を見ていきます。リスティング広告などのPPC広告による流入は、いったん外して考えることが大切です。
ここでは、「Google Analytics(原則無料)」を活用します。
「Google Analytics」では、オーガニック、広告、リファーラルなどの流入先を確認することができます。
このような確認をする際には、「Google Analytics」にログイン後、メニューから「集客」→「チャネル」→「Organic Search」と進んでいくことで見ることができます。
検索流入経由のコンバージョン(転換と訳される。購買や資料請求、アンケートフォームへの入力など、そのサイトでKPIとされる行動への転換)を計測するには、「Google Analytics」で、メニューの「コンバージョン」→「マルチチャネル」→「アシストコンバージョン」と進みます。
すると、コンバージョンにつながった流入経路が数値・グラフで見られます。
そこからさらに「オーガニック検索」クリック→参照/メディアの「セカンダリディメンション」から「集客」→「ランディングページのURL」と進んでいくことで、どのページがコンバージョンに貢献したかを確認することができます。
このことによって、コンバージョンそのものの量や率、コンバージョンに対し、検索流入が占める割合や、その推移、検索流入からコンバージョンにつながる流れに寄与したページなどがわかります。
このように調査を進めると、現状が見えてきます。ここから次のアクションにつなげるためには、効果的/効果的ではないページと、そこで狙っているキーワードを紐づけて考え、狙ったキーワードが検索に反映される状態なのか、また、そのキーワードは適切かを判断していきます。
効果測定の方法について確認してきましたが、多くの担当者にとってより切実なのは、効果測定の結果
「はっきりとは分からないけど、どうやら効果がなさそうだ…」
という状況ではないでしょうか。
冒頭にも書きましたように、SEO対策は安価ではありません。
特に、コンテンツSEOなどは時間も労力もかかるにも関わらず、その結果が不透明だったり、期待通りでなかったりしたら?
担当者としては頭を悩ます所でしょう。打開策の提案、場合によってはプロジェクトの縮小や凍結すら覚悟しなければならないかもしれません。
でも、ちょっと待ってください。
その「効果」、本当に適切でしょうか?
ここでは、KGI(目的)とKPI(目標)のマネジメントという切り口で、ケースごとに紹介していきます。
読んだだけで冷や汗が出てくる「まったく効果が見えてこない」状況…
このような場合、どうしたらよいのでしょう?
まず第一に、計測しているキーワードが適切かを確認しましょう。
すでに述べたように、SEO対策では対策キーワードの設定がキモになります。
それがズレていたり、設定自体は間違っていないが、ベンチマークしているキーワードがずれていると、当然のことながら正しくない結果を見ることになります。
次に、「効果が発揮されるまでの期間」を正しくつかみましょう。
SEO対策は、良くも悪くも即効性がありません(運よく即効性がありそうに見えることもありますが、本質的にはありません。ある、という業者やノウハウがあったら、ブラックハットSEOを疑ってもいいぐらいです)。
なぜなら、有名な「AISAS」のように、顧客の行動は「Attention→Interest→Search…」といくつかの心理的なステップを経て変化するからです。そして、人間なので、その変化も人それぞれです。
ですので、効果が現れるまではある程度の期間がかかるのです。
Ahrefs社のリサーチでも、最短で1~2か月。キーワードがビッグキーワードの場合は8カ月程度かかる場合もある、という結果が出ています。
とはいえ、何もない所からいきなり変化が起こるわけではありません。変化の予兆はそこかしこに出ており、その予兆を読み取ることが大切になります。
代表的な予兆は、「キーワード順位の変動」「リファーラルなどによる間接流入」などが挙げられます。
キーワード順位については、ビッグキーワードではそもそもの検索ボリュームが大きすぎるのですぐに変動しないほうが多いのですが、ロングテールなスモールキーワードなどは1~2日で効果が出ることもあります。
流入やコンバージョンにすぐつながらなくても、検索順位そのものの変化を見ることで、予兆を見ることができます。
また、オーガニック検索による直接流入をSEO対策のKPIにしがちですが(そして、それは誤りではないのですが)、特にコンテンツSEOを行う場合は、自社の記事などが他のサイトやユーザーから評価されることによって生まれた自然なリンクによる流入にも注目するとよいでしょう。いわば「口コミ」のようなものです。
基本的には「organic」の推移を確認しますが、「referral」も確認するようにしてください。
「全く成果が出ない」という場合に大切なことは、問題を解決するためにロジックツリーなどを活用し、工程ごとにあり得る問題をひとつひつと確認していくことです。
地味で苦労が多い作業ではありますが、問題が大きい時ほど、細かく見ていくことで問題の「キモ」を特定することができれば説得力のある次のアクションが実施できます。
また、担当者の精神的な健康のためにも、手が付けられるぐらいに問題を分解し、手が付けられるところから行動していくとよいでしょう。
サイトの目的が、商品やサービスの販売など、「売上の向上」をKGIとしている場合、流入だけ増えても購買というコンバージョンにつながらなければそれは問題です。
そのような場合は、そもそもサイトやSEO対策の「ターゲット設定」が適切であったかをもう一度確認します。
例えば、安価でお手軽なエントリーモデルの商品を販売したいのに、ハイエンドな商品を好むような顧客像をターゲットにしていてはコンバージョンにはつながりにくいですね。
自社の商品→自社サイトのコンテンツ→対策キーワード→SEO対策という流れがそれぞれ協力に相関しているかをチェックしましょう。
ターゲット設定に問題がなければ、内部対策に目を向けます。
サイトの導線や、コンテンツの表現は適切でしょうか?
コンバージョンボタンは目につきやすい所にあるでしょうか?
エントリーフォームはユーザーにとって使いやすいものになっているでしょうか?
このような際に役に立つのが、「Google Analytics」で確認できるページごとの離脱率です。
また、コンバージョンボタンやコンテンツの有効性を確認するためには、ヒートマップのようなツールも有効です。ヒートマップとは、ページの中でユーザーが滞在した場所と時間、マウスクリックした場所などを色合いを変えて表現することで、直感的にユーザーの行動がわかるようにしたものです。
次に、ユーザーの購買ステップに飛躍はないかを確認しましょう。
男女の恋愛でも、出会いがあり、お互いに知り合って信頼関係を深め、デートをして…
とステップを踏んで進展していきます。サイトでのコンバージョンもこれと同じで、ユーザーの考えるステップよりも、サイト運営者の考えるステップがラジカルだと、ユーザーは不安を覚えて離脱してしまいます。
皆さんも、ランディングページから購買ボタンが点滅していたり、5秒に一度クレジットカード登録画面がポップアップしたら、そのサイトを「なんて誠実なんだ!」とは(おそらく)感じないでしょう。
その場合は、ユーザーが納得できるようなステップを構築します。
たとえば、メルマガ購読登録、会員登録、簡単なアンケートへの回答、無料での価値あるコンテンツ(トライアルパッケージなど)の提供など、補助となるステップを設け、ここでのコンバージョンを計測します。
いきなり「結婚してください!」ではなく、「連絡先を交換しましょう」からスタートし、リードを持った状態で次のステップにつなげていくのです。
思うように順位が上がらない場合は、まず内部対策が十分かをチェックしていきましょう。
「titleタグ」や、「meta descriptionタグ」に対策キーワードが使われているでしょうか?
また、タイトルやメタディスクリプションはわかりやすく、直感的で、魅力的でしょうか。
文字数も重要です。PCではタイトル表示は30字程度ですが、モバイルでは20字程度になることに配慮されているでしょうか。
そして、タイトルの冒頭近くに重要なキーワードが含まれているでしょうか。
タイトルではありませんが、最近では日本語ドメイン(URLを日本語表示することのできるサービス)の活用によって、よりユーザーに対し、直感的なサイトの内容を知らせるような工夫もあります。日本語ドメインについては、使うことで検索アルゴリズムに対しポジティブな影響を与えることはおそらくありませんが、ユーザーフレンドリーという観点からは検討しても良いでしょう。
また、「h1」から始まる見出しタグの使用は整理され、適切でしょうか。
次に、自サイトにGoogleから評価を落とされるようなポイントがないかを確認します。
ペナルティなどについて、またインデックスの状況については「Google Search Console」が唯一無二のツールですので、最大限活用しましょう。
Googleから評価を落とされるケースとしては、サイト内に重複や競合がある。質が低いとみなされるコンテンツがあると、サイト全体の評価が下がり、検索順位が上がらなくなります。
サイト内での重複や競合は、「titleタグ」「h(見出し)タグ」などをまず確認し、次にコンテンツ内容の重複や競合をチェックしましょう。
重複や競合などがある場合は、そのコンテンツをリライトしたり、削除したり、統合したりして対応します。
ですが、検索エンジン的には質が低いとしても、サイト構造上必要なページもあります。そのような場合は「noindex」を活用し、検索エンジンにindexされないようにしましょう。
ただし、なんでもかんでも「noindex」すればよい、というわけではありません。検索エンジンへの対策はそれでできたとしても、改善が必要なコンテンツを放置することは、ユーザーフレンドリーではありません。必要に応じて改善は行いましょう。
少し前に流行した、外部リンクの数をとにかく増やすことによりサイトの評価を高めようとするSEO対策の影響か、今でも自サイトがほとんど内容が無いサイトや、どう考えても無関係なサイトからリンクされることがあります。このような状況を放置すると、闇雲なリンクによって評価を高めようとしていると検索エンジンに判断され、自サイトの評価を落とされてしまうことがあります。
このような被リンクに対しては、「nofollow」で検索エンジンの評価対象から外すようにしましょう。
また、自サイトからの発リンクについても同様で、例えば自社のサテライトサイトであっても、内容の薄いサイトとはリンクしないようにしましょう。
見てほしいページにユーザーが遷移してくれない場合には、
の順で確認します。
そもそも、ターゲット設定が間違っていたらそのページへは遷移しません。
「ワンランク上のスペシャルコーヒー」のページに遷移してほしいのに、
「コーヒーなら何でもいい」というユーザー像を設定していたら当然遷移しないでしょう。
このような極端な例はあまりないかもしれませんが、よくあるのがターゲット設定がそもそもあいまい、というケースです。このような場合、無意識のうちにぶれたメッセージやサイト構造になってしまい、異なるターゲットに訴求してしまっているかもしれません。
そして、ターゲットに対し適切なキーワードでの対策を行っているかを確認します。
ここでは、適切なロングテールキーワードが設定されているか、と言い直してもいいでしょう。
ビッグキーワードは、様々なニーズを持つユーザーを含む大きな塊ですので、そのユーザーたちの多くに望む行動をとってもらうことは困難です。それに対し、ロングテールキーワードは、目的意識の明確なユーザーを呼び込みやすくなりますので、狙ったページへの遷移もしやすくなります。ただし、ロングテールキーワードのキモは、先ほど挙げた対策キーワード設定の適切さであり、ピンポイントになる分だけ、明確な戦略やロジックが必要になります。
遷移してほしいページへのリンクが、ランディングページに無かった。
笑えない話ですが、実際に(それもしばしば)起こることです。
導線の構造は、しっかりと時間をかけ、検討して構築されるべきですが、実際にはなかなかそうはいかないのも現実です。そのため、リアルな世界での駅構内やイベントの導線でも、WEB上でのECサイト、会員登録サイトなどの導線でも、「さっきからトップページとFAQをぐるぐる回ってるが、どこにいけばいいんだ!?」というようなことがよく起こります。
このような状態を避けるために、検索段階からスタートし、どのような遷移で目的ページにたどり着くのかは、できる限り検討しましょう。また、一回作った後にも、A/Bテスト(バナーだけを変える、など一部分だけのAパターン、Bパターンをつくり、より効果的なパターンを採用することで改善していく手法)などを行いながら改善していきます。
最後に、目的ページそのものが魅力的で、便利かを確認しましょう。
重要で、かつ悩ましいSEO対策の効果検証ポイントについて、
などできる限り網羅的に紹介してきました。ただ、マニュアル的なHow toについては触れきれなかった部分もありますので、皆さんそれぞれの立場、課題観、興味関心に従ってより深く学んでみることをお勧めします。
特に、SEOコンサルティングの現場での実感としては「効果が生まれる時期」を見誤ったせいで大きなロスを被るケースが多いように感じます。しかし、この部分は変数が多く、分析方法も難しくなることが多いため(統計的な分析を自力で行うことは避けたいことの方が多いでしょう…)、ケースごとの手軽な「タイミング観」を養っていただけるよう、弊社の「SEOによって見込める効果と効果が出るまでの時間、その検証方法とは?」をご紹介いたします。3~5分で内容がつかめるライトコンテンツで、よくあるケースごとのタイミング観が大まかにつかめます。
ただし、より詳細なタイミングの読みとなりますと、ケースごとに異なります。もし自社のケースに対し確実で信頼性のある情報が欲しい場合は、SEO診断サービスを無料で行っておりますので、ご相談下さい。
WEB担当は、複雑で変化の大きなWEBの世界だけでなく、多くの場合リテラシーが十分ではない社内への対策も必要な、難度の高い役割であると、現場の皆様と共にSEO対策を行う中で日々感じております。
少しでもお力になれれば幸いです。